2017年9月17日日曜日

職場に直接電話をかけてくるマンション屋に会ってきた話

私の職場では個人持ちの内線携帯というものがあり、外線から直接かけられる番号もそれぞれの端末についています。ある時期、その外線番号に覚えのない番号から直接かかってくることがいろんな人に起こりました。出てみるとそれはマンションを売ろうとしている不動産屋で、私は彼らがどうやって番号を調べたのかに興味があったので、(普通は会わないでしょうが)会ってきました。

何度か会った結果、いろんな勉強になったので記録しておきます。ちなみに私は不動産に関してはド素人なので、その道の人には当たり前のことだろうと思います。




まず、私は社員の誰かが外線番号のリストを売ったのではないかと疑っていたのですが、そうではなかったようです。携帯番号090-xxxx-yyyyのうち、xxxxは事業者で決まっており、yyyyは事業者内の取り決めらしく、yyyyだけ総当たりで電話をかければ誰かにはつながるということを教えてくれました。

もちろん、マンション屋が本当のことを言っている保証はないのですが、調べればわかるような嘘をつくとも思えませんので、本当である可能性が高いと思います。

8桁だと1億もの番号を総当たりしなければなりませんが、4桁なら1万回電話を掛ければよいので、人海戦術でもなんとかなりそうです。

また、私の会社は比較的名の通った大企業のグループ会社なので、彼らの欲しい契約者がいる可能性が高く、4桁の総当たりでも割に合いそうです。

彼らの欲しい契約者とは、長期ローンを組める返済力を持った人です。マンション屋自身も会社ですので、銀行から融資を受けて物件を買うことはできますが、返済能力の見込みを超えてお金を借りることはできません。そこで、大企業の社員のような、返済力の高い個人に物件を買わせ、管理費を徴収することで収益とするわけです。

ここまでは法に触れているわけでもなく、普通のビジネスとして成り立ちそうですが、その営業方法が無茶苦茶に強引です。

いきなり職場に電話をかけてくるのもそうですが、検討の結果、私にはマンション経営は合わないのでやめると伝えた際、「ここまで会ってきたんだから、理由を会って説明してほしい」とか「約束したんだから会う義務がある」とか言い出しました。

興味深いのは、前向きに検討して会っていた時は、そんな変なことは言わず、普通の好青年だったものが、断ろうとしたとたんに態度が一変したことです。何度も会って私がどんな人間かよく説明しているので、私がそんなことを言われて契約するような人間ではないことは十分わかっていたはずですし、相手もわかっていたような素振りがあったのですが。

推測するに、断られたらこう対応しろというような手順が決められており、マニュアル化されているのではないかと思います。

私は今は仕事が忙しいから検討できないということを何度も伝えたうえで断ったので、普通であれば、「そうですか、仕方ありませんね、何か月か後に余裕ができたらまたご連絡します」となると思いますし、私もそのくらいだったら断るつもりはなかったのですが、前述のような無茶苦茶なことを言われたら決して契約するわけにはいきません。

商品そのものは、マンションが空室のときも85%の補償がついていたり、ローン返済中の売却もできたり、空室リスクの少ない都心の駅近だったりと、悪いものではないと思います。もちろん本当のことを言っていればですが、嘘をついて買わせたらそれは詐欺ですから、出るとこ出たら契約無効になってしまうので、おそらく本当のことでしょう。

ただ、営業方針がとにかく何が何でも契約を取ってこいということなのでしょうが、顧客との信頼関係を築こうという意思が微塵も見られません。しかし私は大いに間違っていると言いたいです。

今回の件も、最後に変なことを言わなければ、いつかワンチャンスあったかもしれないものを、マニュアル通りの応対をしてしまったがためにチャンスを潰してしまいました。短期的には顧客をビビらせて勢いに任せて契約を取るという方法で売り上げが上がるかもしれませんが、そんなやり方は決して長続きしません。

実際、あとで調べたところによると、マンション経営の不動産屋の半分は10年以内に潰れているそうです。

ただでさえ消費者保護の勢いが強く、Webによって消費者の知識が増えている中で、このような方法論は風前の灯火なのではないかと思います。

そして、彼らは根本的なところを誤解しているような気がします。ビジネスで一番大事なのは売り上げではないんです。それは信頼なんです。なぜならお金という紙切れに価値があるという集団幻想が維持されているのは、そこに信頼があるからなんです。お金は信頼の形の一つにすぎないんです。それに目がくらんで信頼を失った業者には、誰も見向きもしなくなるんです。

特に一番大事な取引相手であるお客に対しては、慎重に信頼を育てていかなきゃならんのです。時にゼニを投げうってでも信頼を買うべきなんです。これは私の長くもない社会人経験から得られた悟りの一つです。

彼らの方法論では永遠にそのことに気づくことはないだろうと思うと、なんだか哀れです。

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